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文學の立場
註釋「文明開化の論理の終焉について」「アジアの廃墟」を含む二十六篇を収載した本書は、昭和十四年初から十五年の前半にかけての文章をまとめたものである。刊行にふれた一文で著者は本書の性格を「主に我国の当面している文芸と文明の問題についての主張を述べた(中略)、文学作品集といふよりも、むしろ私の訴へたいものをかいた一般的な評論集」とし、「それだけ自分の作品としては文学的に完全ではないかもしれない」と述べている。保田の言う「文学の立場」とは、旧来の教養や文化概念に拠る人たちが政治に対する文学の純粋性・独立性を主張する類の言説とは質を異にし、日本の歴史に対する祈念=詩心が体制に与えるインパクトを信じる立場とも言うべきものである。政治的な状況を考えれば、著者の断念と信念が交錯した時代の書といっていいかもしれない。