令和という新しい時代を迎えた現代において、明治維新を考え直すことには、どのような意味があるのだろうか? 平成の終焉が決まった2018年は、ちょうど明治維新150周年の節目の年であった。この年の前後から、再び明治維新を問い直そうという動きが、日本のみならず世界各地で活発になったが、その一環として、九州大学大学院地球社会統合科学府は、「九州から見た明治維新とアジアの近代化」と題した明治維新150周年記念国際シンポジウムを主催した。
本書は、このシンポジウムに参加した内外の研究者が、明治維新を日本とアジア、および世界との連関のなかに位置づけるとともに、現在に至るまでの150年と関連づけることにより、その意味を再考しようとするものである。第Ⅰ部ではまず、物語としての歴史に着目し、これまで語り継がれてきた明治維新という神話について、日本内外の広く長い時空的視点から問い直す。この神話に描き出された歴史像の変遷をたどり、21世紀における現代的な語りをどう理解すればよいのかが探求される。第Ⅱ部では、明治維新と辛亥革命およびロシア革命との関係性について検討し、中国のみならずチベット、モンゴル、満洲、そしてロシア極東地域を日本の近代史と繋げる議論が展開される。第Ⅲ部では、九州とその周辺地域からナショナル・ヒストリーを捉え直す試みとして、関門海峡から見た幕末日本の国際環境、「琉球併合」を経て帝国に組み込まれた沖縄の近代、日本人女性作家による台湾の文学表象、について検討を行う。
従来とは異なる視点から、多角的・包括的に日本とアジアという地政学的領域を捉え直し、明治維新の歴史的な位置づけを探る、挑戦的な試み。